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金価格は高騰する?3つの判断指標を解説
「有事の金」という言葉があります。
これは相場下落時には安全資産の1つと見られている金が買われ、株式等のリスク資産と逆行して値上がりすることから生まれた言葉です。
実際に2020年にはコロナショックにより一時的に下落した後、過去最高値を更新する力強い値動きを見せました。
2021年に入ってからはビットコインをはじめとする仮想通貨が金地金に代わって上昇を続けていましたが、4月にビットコインが一時下落してからは急激な回復を見せています。
金を始めとした貴金属に投資する3億5,000万ドル規模のファンドを運営しているディエゴ・パリラ氏は、最近になり金への投資比率を高めているようです。
パリラ氏は金投資について「米国は巨大なバブルの渦中にあるが、これが崩壊することを恐れて中央銀行は金利を高めることはしない。インフレ率の上昇と実質金利の低下によって、金にとって非常に良い環境となっている」と述べています。
金は従来「避難資産」であり、景気が良くなると金投資は良いパフォーマンスを生まないと考えられています。
今回の値上がりは持続するのか、3つの観点から分析していきます。
インフレの見通し
FRBは積極的な金融緩和を継続して一時的な物価の上振れは容認するという立場を明確に示していますが、世界各国ではインフレが加速する見通しです。
2020年 | 2021年(予想) | |
米国 | 1.2% | 2.3% |
英国 | 0.9% | 1.5% |
ユーロ圏 | 0.3% | 1.4% |
日本 | 0.0% | 0.1% |
中国 | 2.4% | 1.2% |
ブラジル | 3.2% | 4.6% |
ロシア | 3.4% | 4.5% |
トルコ | 12.3% | 13.6% |
2021年に入って米国の金利上昇に伴うドル高が進行し、特に新興国には通貨安による輸入物価の上昇圧力がかかっています。実際にブラジルやトルコはインフレ抑制のために利上げを行っておりますが、金価格は値上がりしやすい環境といえます。
インフレが長期的に継続するかは今後の経済情勢を注視した上で判断する必要がありますが、FRBのパウエル議長は4月に「物価上昇率がしばらく2%を超えて推移した時に利上げを考える」と、金融緩和の縮小には慎重な姿勢を示しています。新型コロナウイルスの感染状況や雇用統計といった指標が先行指標になるでしょう。
金価格が動く要因6選
- インフレ率: 一般に、インフレが高まると、金の価値が高まる傾向にあります。これは金が価値の保存手段と見なされるため、通貨の価値が下がると金に対する需要が高まるからです。
- 米ドルの価値: 金価格は通常、米ドルで評価されるため、米ドルの価値が下がると金価格は上がる傾向にあります。これは金とドルが逆相関の関係にあるためです。
- 中央銀行の政策: 世界各国の中央銀行が金融政策として金を購入したり売却したりすると、その供給と需要に影響を及ぼし、金価格に影響します。
- 経済の不安定性: 政治的な不安や経済的な危機の時、投資家は安全な資産へと資金を移動させる傾向にあります。金は「安全な避難所」と見なされることが多く、こうした時期には価格が上昇することがあります。
- 市場の供給と需要: 金の産出量が減少したり、新たな金の需要が生まれたりすると、価格に影響します。例えば、技術的な進歩により金が必要とされる新しい用途が見つかった場合、需要が増加し価格が上昇する可能性があります。
- 金融市場のボラティリティ: 株式や債券など他の金融商品の市場が不安定になると、金に対する需要が高まり、価格が上昇することがあります。
投資家の需要
Bloombergによると、米国の上場投資信託は2021年の1月~4月の4か月で貴金属への投資を237トン減少させ、Comex(ニューヨーク商品取引所)を利用するヘッジファンドも貴金属への投資額を2年ぶりの低水準まで低下させています。
直近の値上がりにより投資家の資金は戻りつつありますが、まだポジションは小さいため値上がり余地は大きい状態です。
約9000億ユーロを運用する資産管理会社であるエイゴンのロバート氏はコロナウイルスのワクチンが発表された後、昨年11月に金投資を縮小しました。彼は、ワクチン接種が進み経済が再開されるに連れて安全資産である金への投資は減少するだろうと述べています。
ビットコインの動向
ビットコインはデジタルゴールドとして金を代替する資産クラスになるという予測も専門家の間でなされています。年初にはJPモルガン・チェースはビットコインが金を代替する資産クラスになることを条件に、ビットコインの長期価格ターゲットを14万6000ドルに据えるという調査を発表しました。
これは現物取引やETF、現物取引などのあらゆる金関連の投資額に匹敵することを前提とした目標価格のため実現するとしても早くとも数年後になるという予測ですが、ビットコインが金を代替する資産クラスに成長した場合、金価格は大きく下落することが予想されます。このシナリオは実現されるのか、金とビットコインを比較していきます。
○金とビットコインの比較
それぞれの比較表は下記のようになります。共通点は多く、FRBのパウエル議長も「ビットコインは金の代替資産になり得る」と発言しています。
特性 | ビットコイン | 金 |
希少性 | 発行総数の上限 | 埋蔵量の上限 |
採掘コスト | サーバー、電力費用 | 採掘費用 |
偽造可能性 | ブロックチェーン上で確認可 | 理論上は作れるがコストが合わない |
政府による管理 | 受けない | 受けない |
もともとは法定通貨に取って代わるべく誕生したビットコインですが、貨幣の満たす三大機能(価値尺度機能、交換手段機能、価値保存機能)をすべて満たしているわけではありません。時価総額はまだ金よりも相当に小さく、価格変動も大きいため金に代わる安全資産としての地位はまだ遠いといえるでしょう。
今後ビットコインが広く普及し、決済など多くの人に使われるようになれば価格変動も落ち着くと思われますが、いずれにせよ実現までの道のりはまだ遠いといえます。
まとめ
今回は、金価格の今後を占うための3つの視点を解説しました。将来の出来事の予測はプロでも難しい作業ですが、金価格には現状ポジティブな材料が多い状態といえます。
ポートフォリオを検討する際の参考になれば幸いです。