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新興国株投資の特徴や注意点とは?

投資の世界には多様な選択肢がありますが、特に新興国の株式市場は、そのダイナミックな成長潜在力と共に、多くの投資家の注目を集めています。新興国株投資は、高いリターンを期待できる一方で、政治的リスクや通貨の変動など、特有のリスクも伴います。このセクションでは、新興国株投資の基本的な特徴と、投資を行う際の重要な考慮点について概説します。

新興国とは、経済成長が著しく、産業の多様化やインフラの整備が進行中の国々を指します。これらの国々は、しばしば高いGDP成長率を記録し、投資家にとって魅力的な投資先となることがあります。しかし、高い成長率は高いリスクを伴うこともあり、新興国株投資を検討する際には、慎重な分析と戦略が求められます。

本記事では、新興国株投資の魅力とリスクをバランスよく理解し、投資家自身のポートフォリオに適した投資判断を下すための知識を提供することを目指しています。次のセクションでは、新興国株投資の具体的な特徴に焦点を当て、その後のセクションでリスク管理の方法について詳しく掘り下げていきます。投資の可能性を広げ、新興国市場の機会を最大限に活用するための第一歩として、この「はじめに」セクションをお読みください。

目次

新興国投資のメリット

新興国への投資は、大きく分けて2つのメリットがあります。

メリットその1:長期間で高いリターンが期待できる

新興国の経済成長率は先進国と比較して高く、それに伴う株価上昇により長期的に高いリターンを示しています。短期間の変動が大きいため期間を区切っての投資は難しい資産クラスですが、長期間の保有が可能であれば先進国よりは高いリターンが期待できると考えられます。

1987年12月~2021年3月(先進国株:MSCI World Index、新興国株:MSCI Emerging Markets Index)

しかし、永遠に高度経済成長を維持することは不可能です。新興国が発展し先進国に追いつくに連れ、成長率は鈍化する点には注意が必要です。IMFの発表するGDP成長率予測などが一つの目安になるでしょう。

メリットその2:分散投資効果

新興国に投資することで先進国との地理的な分散を実現でき、異なる値動きをすると推測できることから一定の分散投資効果が見込めますが、現時点では先進国株と新興国株に高い分散投資効果があると言うことはできません。

分散投資は「値動きの異なる複数の資産に投資することでポートフォリオ全体の安定性を高める」ことが狙いで、下図のようなイメージになります。

上昇・下落のタイミングなど値動きの異なる資産であれば分散投資によりリスクを抑えることが可能になりますが、経済・金融のグローバル化から世界の景気パターンは似通う傾向にあり、先進国・新興国関わらず資産価格の値動きの相関性は高くなっています。

実際に先進国株と新興国株の相関係数は0.71と高水準にあり、分散投資の効果は低いと言わざるを得ません。

先進国株のみのポートフォリオに新興国株を組入れることでハイリスク・ハイリターンな運用成果に期待することは可能ですが、分散投資でリスクを低減するという効果は薄いと捉えた方がよいでしょう。

新興国と先進国の比較表

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特徴新興国株投資先進国株投資
経済成長率高い(高いリターンの可能性)低い〜中程度(安定したリターン)
市場の多様性地理的・産業的に多様比較的均一
バリュー投資の機会多い(情報の非対称性による)少ない(情報がより透明)
人口動態若い労働力が多く、消費者基盤の成長高齢化が進む、消費者基盤の成熟
技術革新急速な進展(特にモバイル・デジタル分野)安定した進展
国際貿易拡大中(グローバル化の影響)既に確立された市場
政策改革と構造改革積極的(経済活性化のため)定期的(既存のシステムの改善)
通貨の変動大きい(ヘッジが重要)比較的安定
環境と持続可能性改善に向けた取り組みが進行中既に高い基準を設定
政治的変動大きい(リスク管理が必要)比較的安定

新興国投資のリスク

新興国投資固有のリスクを4つほど紹介します。

リスクその1:為替相場の変動

新興国通貨は先進国通貨と異なり、様々な要因で大きく上下するリスクがあります。例としてブラジルレアル/米ドルと日本円/米ドルの同期間での推移を掲載しました。

2000年1月を1として、それぞれの変動率を測定しています。先進国である日本円と比較して、ブラジルレアルの為替相場は大きく変動していることがわかります。

2000年1月~2021年4月

かつて固定相場制が殆どであった新興国は国際資本移動の自由化に沿って多くの国で変動相場制に移行しましたが、実際には各国当局の管理下での運用や、米ドルへ連動するペッグ制を取っているところ等様々な形態があります。

為替相場の変動リスクをヘッジするためにはオプションや通貨先物を利用する必要がありますが、ヘッジコストがかかってしまうことも事実です。

リスクその2:市場の流動性

新興国は先進国に比べ流動性が薄い傾向にあり、変動も大きいことから売却のタイミングを逃してしまうリスクが存在します。流動性の薄さから取引コストが高くなりやすいことも特徴です。

リスクその3:情報の非対称性

新興国は税制や会計制度の相違、ディスクロージャー制度の未整備などにより、正確な情報をリアルタイムで入手することが難しくなる傾向があります。米国や欧州であればある程度迅速に情報を得ることが可能ですが、的確なタイミングで情報を入手できない可能性があることは新興国投資のリスクになります。

しかし、テクノロジーや金融規制の整備が進む中でこういった傾向は弱まってきています。

リスクその4:資本規制の可能性

国際資本移動について、十分な自由化が行われていない可能性があります。

方向性としては海外資本の受入れに関する制度調整が進捗しており、常に注意を払わなければならないリスクではないかと考えられますが、経済に大きな混乱が生じた際は資本規制が発動され、投資資本の引き上げが困難になる可能性があることはリスクとして認識しておく必要があります。

過去にはアジア通貨危機の際、マレーシアが自国経済を守るために資本規制を行っています。マレーシアリンギ建て証券の売却資金は1年間マレーシア国内に留めるといった規制を導入し、海外資本の流出を防ぐ措置が取られました。

先進国と新興国のリスクの比較

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比較項目先進国株投資新興国株投資
政治的リスク一般に低い。政治的安定性が高く、予測可能な政策変更が多い。高い。政治的不安定性や予測不可能な政策変更のリスクがある。
通貨リスク通貨の価値が比較的安定していることが多い。価値の大きな変動があり、投資価値に影響を及ぼす可能性がある。
経済的リスク安定した経済成長を見せるが、成長率は比較的低い。急速な経済成長が見込まれるが、不安定性も伴う。
法的・規制のリスク法律や規制が発展し、一般に透明性が高い。法律や規制が発展途上であり、変更が予測不可能な場合がある。
流動性リスク高い流動性。大量の株式を迅速に売買することが可能。流動性が低く、大量売買時に価格が不利になるリスクがある。
社会的・文化的リスク比較的均一なビジネス慣行と消費者行動。多様な社会的、文化的背景がビジネス慣行や消費者行動に影響を及ぼす。
技術的リスク技術的に進んでおり、革新的な企業が多い。技術的に遅れがあり、競争力を維持するための投資が必要な場合がある。

新興国株投資における重要な経済指標

新興国の株式市場への投資を考える際、以下の経済指標に注目することが重要です。

  1. GDP成長率: 新興国の経済成長の健全さを示す指標です。高い成長率は、企業の収益増加と株価上昇の可能性を示唆しています。
  2. インフレ率: 物価の上昇率が示すインフレ率は、中央銀行の金融政策や通貨価値に影響を与えます。適度なインフレは経済成長を促しますが、高インフレは投資リスクを高める可能性があります。
  3. 貿易収支: 輸出と輸入の差額が示す貿易収支は、国の経済活動の外部依存度を示します。健全な貿易収支は、経済の安定性を示し、投資家にとって魅力的です。
  4. 政策金利: 中央銀行が設定する政策金利は、国の金融環境を反映し、投資の魅力に直結します。低金利は経済活動を刺激し、株式市場に資金を誘導する可能性があります。
  5. 失業率: 労働市場の健全さを示す失業率は、消費者の支出能力と直結します。低失業率は経済の強さを示し、企業の収益向上に寄与する可能性があります。

市場動向の分析

新興国株投資では、以下の市場動向を分析することが重要です。

  1. 市場のボラティリティ: 新興国市場は変動が激しいことが多く、ボラティリティの分析を通じてリスク管理を行う必要があります。
  2. 通貨リスク: 新興国の通貨はしばしば大きな変動を見せるため、為替リスクを考慮することが不可欠です。
  3. 政治的安定性: 政治的な変動は市場に大きな影響を与えるため、政治的リスクを評価することが重要です。
  4. 国際関係: 貿易協定や国際的な制裁など、国際関係の変化は新興国市場に直接影響を及ぼします。
  5. 市場の成熟度: 新興国市場の成熟度は、市場の透明性や規制の整備度に関連し、投資の安全性を左右します。

これらの指標と動向を綿密に分析し、投資戦略を立てることが、新興国株投資の成功には不可欠です。常に最新の情報にアクセスし、市場の変動に柔軟に対応することが求められます。

主要な新興国の特徴

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経済成長インフレ率貿易収支政策金利失業率市場のボラティリティ通貨リスク政治的安定性国際関係市場の成熟度
中国高い抑制されている黒字変動あり低い中程度高い安定複雑成熟している
インド高い中程度赤字高い中程度高い中程度概ね安定改善中発展中
ブラジル中程度高い黒字高い高い高い高い変動あり積極的発展中
ロシア低い高い黒字高い低い高い非常に高い不安定緊張成熟している
南アフリカ低い高い赤字高い非常に高い高い高い概ね安定積極的発展中

新興国への株式投資

新興国の株式への直接投資は現在メジャーではなく、投資信託やETFを通じて投資する方法が一般的です。

新興国全体の指標となるインデックスはMSCI Emerging Markets Indexが用いられており、地域別の構成比率や組入れ上位銘柄はこちらのようになっています。

MSCI Emerging Markets Index fact sheet から作成

このインデックスに連動するような運用を行っているファンドは多くあり、下記のような例が挙げられます。

[投資信託]

■eMAXIS Slim 新興国株式インデックス

■SBI・新興国株式インデックスファンド

■SMT新興国株式インデックス

[ETF]

■上場インデックスファンド海外新興国株式

■iシェアーズ MSCI エマージングマーケットETF

またアジアやBRICsといった地域を限定するファンドや、インデックスを上回る運用成績を目指すアクティブファンドも存在しています。

DC(確定拠出年金)やつみたてNISAでも同様の運用を行っているファンドは多いため、長期投資を前提とした積立投資のポートフォリオに組み込むことも面白いのではないでしょうか。

新興国への債券投資

新興国への投資は、株式だけでなく債券も可能です。アジア危機、アルゼンチンのデフォルト等によりハイリスクな投資対象というイメージが強いと思いますが、近年では新興国のファンダメンタルの改善や先進国債券の低利回りという状況から、株式とは異なるオルタナティブ資産としての地位を高めつつあります。

低格付け債が主になるためデフォルトといったリスクは考慮する必要はありますが、先進国株式との分散投資先としては面白いのではないでしょうか。

ヘッジファンドを通した新興国投資

日本から情報が得にくいという点が新興国投資の大きなリスクですが、海外のヘッジファンドに運用を任せることでリサーチや銘柄選定を委託することが可能になります。

中国や香港のヘッジファンドには、新興国投資を用いてハイリスクながらハイリターンな実績を残しているファンドも存在しています。

世界トップクラスの実績を持つヘッジファンドへの投資をご検討の方は、ぜひヘッジファンドダイレクトへご相談ください。ヘッジファンドダイレクトではあなたの投資目標やニーズに合致した理想的な商品を紹介しているので、納得できる資産運用をサポートします。

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この記事を書いた人

監修:柿本 紘輝(CFP証券アナリスト協会検定会員
業界最大手の投資助言会社ヘッジファンドダイレクト株式会社が運営。
富裕層向けに投資助言契約累計1395.9億円(2023年12月末時点)。
当社の認定ファイナンシャルプランナー(CFP、国際資格)、証券アナリスト(CMA)が監修して、初心者にも分かりやすく、良質な情報をお届けしています。

ヘッジファンドダイレクト株式会社
金融商品取引業者 関東財務局(金商)第532号
東京都千代田区丸の内1-8-2鉄鋼ビルディング10F

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