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2023年以降の生成AIブームを背景に、NVIDIAやMicrosoft、Alphabet(Google)といったAI関連株は急騰を続け、市場では「AI株バブル」との声も上がるようになりました。こうした状況下、世界の大手ヘッジファンドは2025年にどのような投資姿勢で臨んだのでしょうか。
本稿では、Bridgewater Associates、Citadel、Millennium Management、Point72 Asset Management、D.E. Shawといった著名ファンドの動向を分析します。特に2025年における各ファンドのAI株へのポジション変化や経営陣の発言、新規エクスポージャー構築の動きを振り返りながら、実務家の視点で考察を加えていきます。
各ファンドの動向から浮かび上がるのは、AI関連銘柄への強気姿勢と警戒感が交錯する複雑な戦略です。ヘッジファンド各社はAIブームの利益機会を積極的に追求する一方で、バリュエーション上昇によるリスクには慎重に目配りしており、その巧みなポジション調整の跡が確認できます。
世界最大規模のマクロ系ヘッジファンドであるブリッジウォーターは、創業者レイ・ダリオの下で築かれた独特の投資哲学で知られています。2025年前半、同社はAI関連株へ大胆に傾斜し、年央までのパフォーマンスは主要ヘッジファンド中トップクラスとなりました。しかし後半にかけては利食いとリスク管理を優先し、ポジションを大幅に縮小するという機動的な動きを見せています。
2025年第2四半期の時点で、ブリッジウォーターは生成AIブームの波に乗る形でNVIDIA株を前期末比で約2.5倍、具体的には154.5%増やして723万株を保有するに至りました。これは同社ポートフォリオ中最大の単一持株となり、評価額は約114億ドルに達しています。さらにAlphabet株を84%増の9億8700万ドル分、Microsoft株も112%増の8億5300万ドル分へと拡大しました。加えてBroadcomを102%、Palo Alto Networksを117%買い増すなど、AI関連銘柄への投資を全面的に強化しています。いわゆる「マグニフィセント7」と呼ばれる米大型テック株の調整局面においても、このモメンタム転換を攻めた形です。
ところが第3四半期に入ると、ブリッジウォーターは戦略を大きく転換しました。NVIDIA株の持ち高を約3分の1、つまり65%も減らし、約250万株へと縮小したのです。それでも評価額は数十億ドル規模に上りますが、前期からの変化は劇的でした。Alphabetも半分以上を売却して約265万株に削減し、Amazon.comも約10%減らしています。その代わりに、AdobeやDynatrace、Etsyといったソフトウェア・決済分野の銘柄に資金を振り向けました。また半導体製造装置のApplied MaterialsやLam Research、動画配信のNetflixなど、割高なメガキャップAI株から、バリューが見込めるハードウェアや他セクターへのローテーションを進めています。
ブリッジウォーターの共同CIO陣は最近の投資家向け報告で、市場の安定に対するリスクの高まりに警鐘を鳴らしています。AI株高騰による相場過熱感への警戒が、こうしたポジション転換の背景にあったと考えられます。実際、この機動的なポジション転換により、ブリッジウォーターは2025年前9ヶ月間で同業を凌ぐ好成績を収めました。AI相場の上昇局面では果敢に攻め、リスクが意識され始めるや素早く手仕舞う──まさに老舗マクロヘッジファンドらしい戦略運用が際立つ事例と言えるでしょう。

マルチストラテジーの雄シタデルは、Ken Griffin氏率いる下で、AIブームに沸く市場を比較的冷静に見据えていたようです。グリフィン氏は2025年10月の投資カンファレンスで興味深い発言をしています。「生成AIは業務効率向上には役立つが、アルファ、つまり超過収益の獲得には今のところ役立っていない」と述べ、ウォール街のAI熱に一石を投じました。さらに「当社の成功はチャットボットではなく、人間の鋭い銘柄選択とリスク管理によるもの」とも語り、AIブームに浮かれることなくファンダメンタルズ重視の姿勢を強調しています。
実際、シタデルの13F公開ポートフォリオを見ると、その規模は約1,150億ドルに上りますが、上位組入銘柄はJPモルガン、Amazon、エネルギー企業のHess、ホームデポ、医療機器のメドトロニックなど、いわば「地に足の着いた」銘柄が並んでいます。NVIDIAやMicrosoftといったAI関連の巨大株も保有していますが、その規模や売買タイミングからは投機的というより、ファンダメンタルに基づく確信買いであることが伺えます。グリフィン氏の言葉通り、ポートフォリオ全体でAI銘柄に過度に偏ることなく分散が図られているのです。
シタデルが注目されるのは、2024年前半のAIラリーで大胆に利益確定を行っていた点です。例えば2024年第2四半期には、NVIDIA株を約920万株売却し、持ち株の79%を処分して大幅な利益確定を行いました。同時にBroadcom株を64%も買い増し、同銘柄を上位10位の保有銘柄に押し上げています。これはAIブームの本命であるNVIDIAから恩恵を受けつつ、関連する半導体インフラ企業にも目を配る戦略と言えます。さらにAmazon株を110万株新規取得するなど、ポートフォリオをバランスさせる動きも見られました。
こうした戦略の結果、シタデルの上位20銘柄は過去3年で累計101.9%のリターンを叩き出し、S&P500の63.9%を大きく凌駕しています。AI銘柄偏重に陥らず、セクター配分やバリュエーションを常に意識した運用が、超過収益の源泉であることを実証した形です。要するにシタデルは、AIバブルの渦中でも冷静さを失わず、「熱狂に踊らない」戦略を貫いています。AI技術の進展そのものには注目しつつも、それを投資でいかに収益化するかについては慎重であり、あくまで人間の洞察に基づく厳選投資で勝負する姿勢を崩していません。このスタンスは、バブル的局面でのリスク管理のお手本と言えるでしょう。

イスラエル・イングランダー氏率いるマルチ戦略ファンドのミレニアムは、AIブームに対して「大きく乗りすぎず、外しもせず」という巧みな立ち回りを見せています。総資産20兆円超、数千銘柄に分散投資する同社のスタイル上、個別銘柄への依存度は限定的ですが、それでも主要テック株の動向には敏感に反応しています。
ミレニアムは2024年時点でNVIDIA株を大量保有する一方、徐々に利益確定を進めていた形跡があります。例えば2024年第2四半期、NVIDIA株を67万株売却し持ち高の約5%を削減する一方で、Broadcom株を55%も買い増しました。Broadcomは同社ポートフォリオで第8位の大型持ち株に浮上しています。この動きは、AI特需で急騰したNVIDIAのポジションを一部削りつつ、データセンター向け半導体など裏方で収益を伸ばす銘柄にシフトするヘッジ戦略とも解釈できます。
その後もミレニアムは、AI関連のトップ企業への一定のエクスポージャーを維持しています。最新の公開情報である2025年第3四半期でも、NVIDIAは同社全保有資産の0.8%強を占める主要ポジションとなっており、評価額にして20億ドル規模を投じています。MicrosoftやAlphabet、AMDなど他のAI関連株も上位保有に名を連ね、AIセクター全体への厚みある投資を行っています。もっとも個別銘柄リスクは厳密にコントロールしており、NVIDIAの比率も1%未満に抑えるなど、ポートフォリオ全体のバランスと流動性を重視した配分となっています。
言い換えれば、ミレニアムはAI革命の恩恵を享受しつつも「決して一極集中はしない」という慎重さを持ち合わせています。相場環境に応じて微調整を繰り返し、今年も堅実な年初来プラス成績を確保しているもようです。マルチストラテジーらしく、多角的なポジション構築でAIバブルに翻弄されない安定収益を狙うアプローチと言えるでしょう。

スティーブ・コーエン氏率いるPoint72は、今回のAIブームで最も積極果敢に攻めたファンドの一つです。コーエン氏自身「AIは今後も続く構造的な成長トレンドだ」と強調しており、AI分野への長期的な強気姿勢を隠しません。その戦略は大型株から新興企業、果ては新ファンド創設まで多岐にわたり、AI分野へのエクスポージャーを拡大するものとなっています。
まず公開ポートフォリオ上では、2025年第2四半期にNVIDIA株を一気に3倍近くに買い増す大胆な動きを見せました。持ち株数は約430万株増、つまり207%の増加となり、同社のNVIDIA保有額は数十億ドル規模に達しています。一方で、小型のAI関連株への投機的な賭けは縮小し、同四半期にSoundHound AI、つまり会話型AIスタートアップの株を全て売却しています。すなわち「主役であるNVIDIAに集中し、周辺の小型株から資金を引き上げる」方向に舵を切ったわけです。この判断について市場専門家は、AIインフラを支える「ゴールドラッシュでのシャベル製造者」たるNVIDIAに注力し、不確実なニッチプレイヤーより規模と競争優位性を持つ企業に賭けたものだと評しています。
さらにPoint72が際立つのは、AI特化の新ファンド「Turion」の立ち上げです。Turionファンドは2024年10月に運用を開始し、開始3ヶ月で14%のリターンを上げ、資産規模は15億ドルに達しました。2025年に入っても資金流入と好調な運用が続き、年初来で約30%の利益を上げて資産規模は30億ドル超に拡大したと報じられています。10月に一時9%のドローダウンを被ったものの、年内通算では大幅プラスとなっています。TurionはAIハードウェアブームの勝ち組と負け組双方に投資するロング・ショート戦略とされ、AI関連の個別株で積極的に収益機会を狙っています。コーエン氏のビジョンの下、Point72はチーム増強や中国AI市場への着目も含め多方面でAIへの投資攻勢を強めており、まさにヘッジファンド業界におけるAI投資のフロントランナー的存在となっています。
もっとも、Point72のアプローチは「闇雲な強気」ではありません。前述の通りハイプに走りがちな小型AI銘柄は素早く見切り、NVIDIAやMicrosoftなど確固たる技術基盤と収益力を持つ巨人へのエクスポージャーを厚くする戦略です。コーエン氏も自身のポートフォリオマネージャー陣に対し「AIバブル的な銘柄から持続的成長が見込めるコア銘柄へ資金を再配分せよ」とのメッセージを発しているとも伝えられます。言うなれば、AI革命の「何に賭けるか」を見極め、攻める所は攻めつつ守りも固める──Point72はそのバランス感覚で高いリターンを実現しているのです。
クオンツ運用のパイオニア、D.E.ショウもAI株ブームに独自の足跡を残しています。同社は数千銘柄に分散投資する超大型ファンドですが、中でもNVIDIAは常にトップクラスの保有銘柄でした。しかしその売買履歴を見ると、AIラリーの山谷で機動的にポジション調整していることが分かります。
具体的には、2024年中頃にNVIDIA株の持ち高を半分近く削減しました。約1,210万株を売却し、持ち株比率を52%も調整しています。これは株価急騰による利益確定とリスク低減の動きと考えられます。同時に同社はBroadcom株を229%という大幅増で買い増し、AIインフラ関連へ資金をローテーションしています。まさに「AI本命株で利益を取りつつ、関連株で次の機会を狙う」という回転売買です。
その後、2025年前半には再びNVIDIA株を買い増した模様で、第2四半期には持ち高を一挙143%増やしたとのデータもあります。評価額ベースで約29億5千万ドル相当の増加となります。AI需要の持続を見て再エントリーした形ですが、第3四半期には他のファンド同様に一部利食いを入れた可能性があります。実際、2025年末時点でもNVIDIAはD.E.ショウのポートフォリオで依然第3位の大型持ち株となっており、完全には手放していません。これは同社がAIセクターの長期的な成長ポテンシャルを信じつつも、短期の過熱感には敏感に対処していることを物語ります。
総じてD.E.ショウは、定量モデルに基づく素早いトレーディングでAI関連株のボラティリティを収益機会に変換してきました。NVIDIAやMicrosoft、AMDといった主要銘柄はもちろん、Arm Holdingsの新規上場にも参画するなど、マーケット全体の流れを捉えています。まさに「AI相場を分析し尽くし、売るべき時に売り、買うべき時に買う」という量的ヘッジファンドの真骨頂と言えます。

以上、大手ヘッジファンドの動向を振り返ると、「AI株バブルか否か」を巡る見方は一様ではないものの、共通しているのは慎重なリスク管理と選別眼です。各ファンドともAI関連株のポテンシャル自体は評価し大量の資金を投じましたが、それぞれの手法で過熱リスクに備えるヘッジやポジション調整を行っています。
ブリッジウォーターのようにブーム序盤で攻めて後半で引く戦略は、バブル的急騰局面の利益を確保しつつ下振れリスクを抑える教訓となります。共同CIOによる警鐘が示す通り、相場の安定を脅かすリスク、つまり過剰な期待や高バリュエーションには敏感に反応すべきです。
シタデルやミレニアムに見る分散とバリュー重視の姿勢は、仮にAIセクターに調整があってもファンド全体への影響を限定に留める効果があります。「有望だからと一点買いしない」のは実務家にとって肝に銘じたい点で、特に個人投資家がAIテーマに没頭しすぎるリスクを戒めています。
Point72の動きから読み取れるのは、本質的価値のある銘柄への集中投資と、新興領域への機動的な資源配分です。AIバブル懸念があっても長期の構造的成長と位置付け、専門チームや専用ファンドで深く掘り下げるアプローチは、企業調査力や資本力を備えたプロの強みと言えるでしょう。
D.E.ショウの売買は、市場の過熱感やセンチメント転換を逃さず迅速にポジション調整する重要性を示しています。特にAI関連のようにボラティリティが高いテーマでは、「利が乗ったら部分利確」「押したら再参入」といった臨機応変さが求められることを再認識させられます。
加えて、市場全体としては著名投資家によるAIバブル警告も無視できません。2025年には「ビッグショート」で知られるマイケル・バーリがNVIDIAやPalantirへの大規模なベアポジション、つまりプットオプションを構築し、「AIバブル崩壊」に賭ける動きを見せました。バーリはついに自身のヘッジファンドを閉鎖する決断まで下し、その直前に投資家宛て書簡でAIブームへの警戒感を綴ったとも伝えられます。極端な例ではありますが、こうした動きも念頭に置けば、AI関連株への過度な楽観は禁物と言えます。
とはいえ一方で、ウォーレン・バフェットのような長期投資家がついにGoogle親会社のAlphabet株に新規参入する動きもありました。AIはもはや無視できない巨大潮流であることも事実です。要は、バブル的熱狂と捉えるか、将来の基幹産業への投資と捉えるかは投資家次第ですが、プロの間では「短期の熱と長期の価値」を冷静に判別する眼力が勝敗を分けています。
実務家へのメッセージとして、本稿で紹介したヘッジファンドの動向は次の示唆を与えてくれます。
今年後半以降、AI株相場は一進一退の展開となっていますが、上述のようなヘッジファンドの売買動向は実践的な知見の宝庫です。読者の皆様もこれら「賢人たちの動き」をヒントに、AI関連銘柄との健全な付き合い方を再考してみてはいかがでしょうか。相場に熱狂と不安が渦巻く時こそ、冷静な戦略と思考が問われる──ヘッジファンドたちの姿勢はそのことを雄弁に物語っています。
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監修:柿本 紘輝(CFP、証券アナリスト協会検定会員)
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