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ヘッジファンド投資のトレンド2023

ヘッジファンドは、投資家の資産を増やすための一つの手段として、その多様性と高いリターンの可能性から注目を集めています。しかし、ヘッジファンドの世界は常に変化しており、投資家は新たなトレンドを把握し、それに対応する戦略を立てる必要があります。この記事では、2022年の実績を踏まえて2023年の最新のヘッジファンド投資のトレンドに焦点を当てて解説します。

2022年はシタデル、Point72、ミレニアムなど、大手のマルチストラテジー戦略の躍進の一年となりました。また大手のトレンドフォロー戦略も高いリターンを上げ分散投資先としてのニーズが高まっています。

一方2021年まで好調だったテクノロジー系の株式ロングショート戦略のヘッジファンドは大きなマイナスとなり、より安定的なヘッジファンドのニーズが機関投資家を中心に高まっています。

2023年は、マクロ経済の変動、テクノロジーの進化、規制の変化など、さまざまな要素がヘッジファンドの運用戦略に影響を与える可能性があります。これらのトレンドを理解し、それに基づいて適切な投資戦略を立てることで、投資家はヘッジファンドから良好なリターンを狙う参考になるでしょう。

目次

2022年のヘッジファンドのパフォーマンス

まずは2022年の戦略別のヘッジファンドの実績を見ていきましょう。

株式ロングショート戦略

2022年の株式ロングショートファンドは世界株が19%マイナスの中ユーリカヘッジのインデックスで‐8.9%となりました。基本株式ロングショート戦略はロングバイアスがありつつも、一部空売りを行っていたため、世界株よりはマイナス幅が限定的となりました。2022年は欧州のロングショート戦略の大手オデイが好調に推移し、153%プラスとなりました。一方大手のタイガーグローバルファンドはマイナス54%となっています。

グローバルマクロ戦略

グローバルマクロ戦略は、経済指標や市場全体を見通しからトップダウンでポジションを構築します。最近では、AIを使った自動売買システムも使われるようになっています。2022年は、この戦略が一部のヘッジファンドにとって有利に働きましたが、一方一部のヘッジファンドは大きなマイナスとなりました。ユーリカヘッジのマクロヘッジファンドインデックスでは2022年は-0.2%となっています。昨年はハイダージュピターファンドが194%と高いリターンを挙げる一方、ブリッジウォーターのオールウェザーファンドはマイナス26%と、値動きが荒かった分結果に大きな差がつきました。

2023年は5月まで

CTA(トレンドフォロー)戦略

CTA戦略は昨年金利と株式両方でトレンドが発生したことから6.6%のリターンをあげました。2021年から始まった金利の上昇は、様々な資産クラスにトレンドを取り戻し、リーマンショック前の力強いトレンドフォロー戦略の成績を取り戻しつつあります。昨年は比較的好調なファンドが多く大手のマン社のAHLは12%プラス、Aspectキャピタルは40%プラス、ウィントンファンドは17%プラスとなっています。

イベントドリブン戦略

イベントドリブン戦略は、企業経営において重要なイベントが起こったとき、そのイベントによって生じる株価の変動を利用して投資する戦略です。2022年は、M&Aや業務提携など、企業に大きな変化をもたらす要因が多く見られ、この戦略を採用したヘッジファンドは良好なパフォーマンスを示しました。一方ユーリカヘッジンのイベントドリブン戦略インデクスは-5.4%でした。2022年は大手のキングストリートがー6%、サードポイントのファンドの一つが-22%でした。

アービトラージ戦略

アービトラージ戦略は、関連性が高い2つの商品の価格差を利用することを目的としています。2022年は、市場のボラティリティが高まり、価格差を利用した取引の機会が増えました。しかし、この戦略は市場変動や政治的な事態などによりリスクを伴うため、適切なリスク管理が求められました。2022年のユーリカヘッジのリラティブバリューインデックスは-3.1%となっています。

大手マルチストラテジー戦略

2022年はマルチストラテジー・マネージャーの年であり、多くの有名なマネージャーが2桁のリターンを記録し、資産を増やした(ファンドが新しい配分に応じる場合など)。パフォーマンスもさることながら、これらの運用会社は多くの追い風の恩恵を受けており、2023年も投資家にとって有利なポジションにあると予想されます。シタデルが38%プラス、ミレニアムが12%、ポイント72が9%プラスだった。

2023年人気のヘッジファンド戦略とは

イギリスのバークレイズ銀行が調査した機関投資家のヘッジファンドへの投資計画によると、2023年は経済指標などからトップダウンで投資先を決めるグローバルマクロ戦略ファンドと破産した企業の債券に投資するディストレスト戦略への投資を増やしたいという回答が多かったようです。

ヘッジファンドへの投資を増やすかどうかについてですが、2022年の調査では29%が増やしたいと述べていたのに対し2023年の調査では19%が増やしたいと述べ、割合は低下しています。しかしファミリーオフィスやプライベートバンクは投資拡大を検討していると述べています。

機関投資家のヘッジファンドへの追加投資の意欲の低下は回答者の56%がリバランスを要因として挙げています。ヘッジファンドは昨年、4.2%のマイナスリターンとアンダーパフォームしましたが、S&P500総合株価指数が20%下落したことから、米株に対しては相対的にアウトパフォームしています。その結果、投資家のポートフォリオに占めるヘッジファンドの割合が規定の上限を超えて増加したため、一部の投資家はリバランスのために投資配分を減らす必要が出てきました。「ヘッジファンドは自らの成功の犠牲になっている」とバークレイズの担当者は述べています。

一方BNPパリバの調査によると投資家は今年マルチストラテジーと裁量型のグローバルマクロ、およびクレジットファンドがリターンを挙げると予想しており、一方昨年好調だったCTAやオルタナティブリスクプレミア戦略はマイナスになると予想しています。

ロイター

2023年のヘッジファンドの主要なトレンド

2023年のヘッジファンド投資のトレンドは、2022年のパフォーマンスとその影響、新たな投資戦略やテクノロジーの導入、規制環境の変化など、多くの要素によって形成されます。特に注目されているのが、最新の技術の採用が進んでいる大手マルチストラテジー戦略ヘッジファンドです。

マクロ経済の影響

ヘッジファンドは、マクロ経済の動向に敏感に反応します。2022年の経済状況は、2023年のヘッジファンドの投資戦略に大きな影響を与えるでしょう。例えば、インフレ率の上昇や金利の動き、地政学的なリスクなどが、ヘッジファンドの投資戦略を左右します。これらの要素は、ヘッジファンドがどのような資産クラスに投資するか、どのようなリスク管理戦略を採用するかを決定する重要な要素となります。

投資戦略の変化

ヘッジファンドは、常に新しい投資戦略を探求し、市場の変化に対応しています。2023年には、新たな投資戦略が登場する可能性があります。例えば、AIや機械学習を活用した投資戦略が増えるでしょう。これらのテクノロジーは、大量のデータを高速に処理し、投資の意思決定を支援します。また、ESG(環境、社会、ガバナンス)投資も増える傾向にあります。投資家は、金融的なリターンだけでなく、社会的な影響も重視するようになっています。

テクノロジーとAIの利用

テクノロジーとAIは、ヘッジファンドの運用においてますます重要な役割を果たすようになります。AIは、大量のデータを高速に処理し、投資の意思決定を支援します。また、ブロックチェーン技術もヘッジファンドの運用に影響を与える可能性があります。ブロックチェーンは、取引の透明性を高め、効率を向上させることができます。

規制とコンプライアンス

規制環境もヘッジファンドの運用に大きな影響を与えます。2023年には、ヘッジファンドとプライベート・エクイティに対する規制強化の動きが見られます。米証券取引委員会(SEC)は、運用資産額が15億ドル以上のヘッジファンドとプライベート・エクイティファンドに対して、取引で巨額損失が発生した場合には、72時間以内の報告を義務付ける新規制を導入しました。これは、金融市場の安定性を保つための重要なステップとなります。

ESG投資の増加

ESG(環境、社会、ガバナンス)投資は、ヘッジファンドの投資戦略においてますます重要な位置を占めるようになります。投資家は、金融的なリターンだけでなく、社会的な影響も重視するようになっています。ヘッジファンドは、ESG要因を考慮した投資戦略を採用することで、投資家の要求に応えるとともに、社会的な価値を創出することができます。

以上のように、2023年のヘッジファンドの主要なトレンドは、マクロ経済の影響、投資戦略の変化、テクノロジーとAIの利用、規制とコンプライアンス、ESG投資の増加など、多くの要素によって形成されます。これらのトレンドは、ヘッジファンドの運用における新たなチャンスと挑戦をもたらし、投資家にとって重要な意味を持つでしょう。

大手マルチストラテジー戦略

マルチストラテジー運用会社は、投資家にとって魅力的な選択肢となっています。これらの会社は、異なるストラテジーやアセットクラスを組み合わせ、投資家が自身でデューデリジェンスを行う手間を省きます。また、市場環境の変化に対応してリスクを再配分し、リターンを最大化する能力があります。これらのファンドはキーパーソンリスクを回避し、期待されるリターンに達しないポートフォリオマネジャーのトレーディングブックの規模を迅速に縮小することができます。

競争環境は厳しいものの、優れた投資人材を惹きつける力があります。規制要件の強化や高度な運用ニーズにより、ヘッジファンドを立ち上げるための参入障壁が最高レベルに達しているため、優れた投資実績を持つ多くのファンドマネージャーが、自分で運用を立ち上げることに伴う費用や失敗のリスクに対処するよりも、アルファの創出に集中できる「プラグアンドプレイ」、つまり運用環境の整った運用会社への参加に魅力を感じています。

2021年は、ハイ・イールド債とレバレッジド・ローン市場で記録的な発行が行われ、その多くがコベナンツが弱いかゼロの状態で発行されました。これにより、不況の市場環境とそれに伴う流動性の問題が、GFC以来最も肥沃なディストレスト機会を提供すると思われる状況が生まれています。2023年には、この機会を正しく捉え、早すぎるタイミングを回避する能力を持つマネジャーによって、リターンが分散されることになると予想されています。

投資家の心理が好転し、2023年の資産流入が純増するとの予測も見られています。多くの投資家は、株式市場のベータ値と相関のないエクスポージャーを求め続けており、そのため、資産配分全体におけるヘッジファンドの役割はかつてないほど重要となっています。

まとめ

AIなどの新しい技術的な進化やESG投資や規制の強化など環境の変化が進む中で、現在ヘッジファンド業界において環境の変化にいち早く対応し、注目されているのは大手のマルチストラテジーヘッジファンドです。ミレニアムやポイント72、シタデル、ブルークレスト・キャピタル・マネジメント、ベリション・ファンド、バリアズニー・アセット・マネジメントなどの大手マルチストラテジー戦略は有能な人材の獲得に注力しており、その競争力はより増しています。

また2022年はトレンドフォロー戦略やイベントドリブン戦略も好調を維持しており、分散投資の観点から今後も注目が集まると考えられます。

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この記事を書いた人

監修:柿本 紘輝(CFP証券アナリスト協会検定会員
業界最大手の投資助言会社ヘッジファンドダイレクト株式会社が運営。
富裕層向けに投資助言契約累計1395.9億円(2023年12月末時点)。
当社の認定ファイナンシャルプランナー(CFP、国際資格)、証券アナリスト(CMA)が監修して、初心者にも分かりやすく、良質な情報をお届けしています。

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金融商品取引業者 関東財務局(金商)第532号
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