ビットコインはなぜ下がったのか?ETF化で変わる分散投資効果と今後の見方

この記事の要点

ビットコインは足元で大きく下落し、投資家の間では「なぜ下がったのか」「今後も下落が続くのか」という疑問が高まっています。本稿の要点は、次の3つです。

  1. ビットコイン下落の背景には、現物ビットコインETFからの資金流出、AI・半導体株への資金選好、米金利・ドル高などが重なっています。
  2. より重要なのは、ETF化によってビットコインが証券市場の資金フローに組み込まれ、「買いやすい資産」であると同時に「売りやすい資産」になったことです。
  3. 分散投資の観点では、ビットコインを単なるオルタナティブ資産と見るのではなく、株式や成長資産との相関、ストレス時の下落幅、ポートフォリオ全体へのリスク寄与度を確認する必要があります。

まずは、ビットコインと金、主要株価指数(S&P500・NASDAQ100)が、この約10年間で実際にどのような値動きをしてきたかを見てみましょう。下のチャートは、表示する資産を選択して比較できます。価格帯が大きく異なるため、初期値を100とした指数表示と、米ドル建ての実価格表示を切り替えられるようにしています。

ビットコイン・金・株価指数の値動き

Price Performance

ビットコイン・金・株価指数の値動き

2016年5月〜2026年5月/月次・対数目盛。表示する資産を選択できます。

当社作成(Bloomberg等の市場データを基に算出)。各資産の月末値。「指数」は2016年5月末を100として基準化した値、「実価格」は米ドル建ての実額(ゴールドは1オンスあたり)。価格帯が大きく異なるため対数目盛で表示しています。過去の値動きは将来の成果を示すものではありません。

ビットコインの値動きの大きさは、株価指数や金と比べて際立っています。大きく上昇する一方で、下落局面では他の資産を大きく上回る下げを記録してきました。この「変動の大きさ」と「他の資産との連動性」をどう捉えるかが、本稿のテーマです。

柿本 紘輝
Author

柿本 紘輝

ヘッジファンドダイレクト株式会社 代表取締役社長

早稲田大学卒業後、金融業界でのキャリアをスタート。ヘッジファンド投資、オルタナティブ運用、富裕層向けアドバイザリーを専門とし、国内外の機関投資家および富裕層に対して、ヘッジファンドへのアクセスと情報提供を行う。CFP®および証券アナリスト検定会員(CMA)資格を保有し、複雑な金融商品を投資家目線でわかりやすく解説することを重視している。

目次

ビットコインはなぜ下がったのか

本稿執筆時点の2026年6月26日、ビットコインは6万ドル前後で推移しており、6月25日には終値ベースで5万9,000ドル台まで下落しました。この下落は、ひとつのニュースだけで説明できるものではありません。暗号資産固有の需給に加えて、米国株式市場、ETFフロー、金利、ドル、投資家のリスク選好が複合的に影響しています。

主な下落要因としては、以下が挙げられます。

  • 現物ビットコインETFからの資金流出
  • AI・半導体株への資金移動
  • 米金利の高止まり・ドル高によるリスク資産への逆風(背景に中東情勢などの地政学リスク)
  • Strategy(旧MicroStrategy)など、ビットコインを大量保有する上場企業を巡るセンチメントの悪化
  • ETF化によってビットコインが売買しやすい金融商品になったこと

特に重要なのは、現物ビットコインETFからの資金流出です。ETFは、資金が流入している局面では価格を押し上げる買い需要になります。しかし、相場が悪化し投資家がリスクを落とす局面では、ETFは逆に売り圧力になります。実際、Farside Investorsのデータでは、米国現物ビットコインETFから2026年6月24日に4.69億ドル、25日に6.917億ドルの純流出が発生しており、下落局面でETFフローが売り圧力として意識されたことが分かります。

ビットコインは24時間365日取引される暗号資産ですが、現物ビットコインETFを通じた売買は、米国株式市場の時間帯や機関投資家のリスク管理と密接に関係します。つまり、ETF化後のビットコインは、以前よりも米国株、NASDAQ、半導体株、米金利、ドル指数といった伝統的金融市場の動きに影響されやすくなっています。


ETF化でビットコインは「買いやすく、売りやすい資産」になった

2024年1月に米国で現物ビットコインETFが承認されたことで、ビットコインは証券口座を通じて投資しやすい資産になりました。ウォレット管理や暗号資産取引所の利用に抵抗があった投資家でも、ETFであれば株式や債券ETFと同じように売買できます。

このアクセス改善は、ビットコインにとって大きなプラス要因でした。実際、ETF承認後は、機関投資家や富裕層、ファミリーオフィス、RIAなどの資金が流入し、ビットコイン価格を押し上げる要因となりました。

しかし、ETF化には反対側の効果もあります。投資しやすくなったということは、売りやすくなったということでもあります。

以前のビットコインは、暗号資産取引所やウォレットを通じて保有する資産でした。投資するには一定の手間があり、保有者も暗号資産に強い関心を持つ層が中心でした。こうした投資家は、短期的な価格下落があっても長期保有する傾向が比較的強かったと考えられます。

一方、ETFを通じてビットコインを保有する投資家は、必ずしもビットコインに強い思想的なこだわりがあるわけではありません。ポートフォリオの一部として、他のETFと同じように保有しているだけの場合もあります。そのため、相場環境が変われば、株式ETF、金ETF、債券ETF、テーマ型ETFと同じように売却対象になります。

従来のビットコイン市場では、長期保有者、マイナー、暗号資産取引所のレバレッジ取引、ステーブルコインの需給などが主な価格変動要因でした。しかし、ETF化後は、これに加えて「証券市場経由の資金フロー」が価格形成の重要な要素になっています。

つまり、ETF化はビットコインを「買いやすい資産」にした一方で、「売りやすい資産」にもしました。この点が、今回の下落を理解するうえで重要です。


AI・半導体株への資金移動もビットコインの重荷に

足元の市場では、投資家の関心がビットコインからAI・半導体株へ移っていることも重要です。

2023年以降、AI関連株は世界の株式市場をけん引してきました。生成AI、データセンター、半導体、電力インフラ、光通信、銅線など、AI関連の投資テーマは非常に広がりを見せています。投資家にとって、AI株は「業績成長を説明しやすいテーマ」です。

これに対して、ビットコインはキャッシュフローを生みません。株式のように売上や利益成長で説明できるわけではなく、価格上昇の根拠は需給、採用拡大への期待、法定通貨価値の毀損に対するヘッジ需要などに依存します。

そのため、投資家がリスク資産を選別する局面では、ビットコインよりもAI・半導体株に資金が向かいやすくなります。実際、2026年5月には、NASDAQ100が10%を超えて上昇する一方で、ビットコインは下落しました。これは、同じリスク資産の中でも、投資家の選好がビットコインよりもAI・ハイテク株へ傾いた可能性を示す動きといえます。特に、ETFを通じてビットコインに投資している投資家は、同じ証券口座内でビットコインETFを売り、半導体ETFや大型テクノロジー株を買うことができます。

ここにも、ETF化の重要な意味があります。

ビットコインは、かつては伝統的金融市場の外側にある資産として見られていました。しかし現在では、株式、金、債券、コモディティ、テーマ型ETFと同じ資金配分の中で比較される資産になっています。これは、ビットコインの投資家層が広がったことの裏返しでもあります。


米金利・ドル高はビットコインに逆風になりやすい

米金利やドルの動きも、ビットコイン価格に影響します。

ビットコインは、株式や債券とは異なり、利息や配当を生みません。そのため、米金利が高止まりし、短期国債やMMFの利回りが魅力的な局面では、ビットコインのような無利息資産を保有する機会費用が意識されやすくなります。

2026年は、この点が特に意識されやすい環境でした。中東情勢などの地政学リスクが原油価格を押し上げ、インフレ圧力が再燃したことで、市場では米連邦準備制度(FRB)の利下げ見通しが後退しました。利下げ期待が剥落し金利が高止まりする展開は、無利息資産であるビットコインにとって追い風が弱まることを意味します。このように、地政学リスクは原油・インフレ・金利という経路を通じて、間接的にビットコインへの逆風として働いた面があります。

また、ドル高もビットコインには逆風になりやすい要因です。ビットコインは「法定通貨価値の毀損に対するヘッジ」として語られることがありますが、短期的にはドル高・実質金利上昇の局面で売られやすくなることがあります。これは金にも見られる特徴です。

もっとも、ビットコインと金は同じではありません。金は長い歴史を持つ実物資産であり、中央銀行や長期投資家の保有対象でもあります。一方、ビットコインは依然として価格変動が大きく、リスクオン・リスクオフの影響を受けやすい資産です。そのため、金利上昇局面や株式市場の調整局面では、金よりも株式に近い動きをする場面があります。


ビットコインの分散投資効果は低下したのか

では、ビットコインの分散投資効果は低下したのでしょうか。

結論としては、分散投資効果が完全になくなったわけではありません。しかし、以前よりも局面に依存するようになったと考えるべきです。

この変化は、当社が算出したビットコインの12ヶ月ローリング相関の推移によく表れています。

期間対S&P500対NASDAQ100対ゴールド
2017〜2019年−0.01+0.03+0.12
2022〜2023年+0.55+0.60+0.25
2025年+0.52+0.49−0.22
2026年(年初来)+0.40+0.56−0.39

※Bloomberg等の市場データを基に当社算出。各期間の月次12ヶ月ローリング相関の平均値。

かつてのビットコインは、株式とも金ともほとんど連動しない資産でした。2017年から2019年にかけて、S&P500やNASDAQ100との相関はゼロ近辺にとどまっており、伝統的資産とは独立した値動きをしていたことが分かります。

しかし、機関投資家や上場企業がビットコインを資産配分に組み入れ始めた2020年以降、株式市場との相関は段階的に上昇しました。新型コロナ後の金融緩和とリスク資産全般への資金流入のなかで、ビットコインは次第に「リスクオン・リスクオフに敏感な資産」としての性格を強めていきます。実際、2022年から2023年にかけては、S&P500との相関が0.55、NASDAQ100との相関が0.60まで高まりました。

ここで重要なのは、この相関上昇が、2024年1月の現物ビットコインETF承認よりも前から進んでいたという点です。ETF化によってはじめて相関が上昇したわけではありません。ビットコインが株式と連動しやすくなった流れは、それ以前の機関化の過程で始まっていました。

ビットコインの12ヶ月ローリング相関の推移

Bitcoin Correlation

ビットコインの12ヶ月ローリング相関の推移

対NASDAQ100・対S&P500・対ゴールド/月次・2017年5月〜2026年5月

対NASDAQ100 対S&P500 対ゴールド

当社算出(Bloomberg等の市場データを基に算出)。各時点の過去12ヶ月の月次リターンから求めたローリング相関係数。相関は市場環境により変動します。
相関の上昇は現物ETF承認(2024年1月)以前から進んでおり、2022〜2023年にすでに高水準に達していました。2025年以降は金との相関がマイナスに転じています。

では、ETF化は何を変えたのでしょうか。ETF化が変えたのは、相関そのものというより、資金フローの経路です。ビットコインがETFという証券の形をまとったことで、株式や金、債券、テーマ型ETFとまったく同じ証券口座のなかで、同じリスク管理の枠組みのもとで売買される資産になりました。すでに高まっていた株式市場との連動性が、ETF化によって伝統的金融市場の資金フローの内側に固定された、と理解するのが実態に近いといえます。

そして2025年以降は、もう一つの変化が加わります。金との相関がマイナスに転じたのです。2026年5月末時点では、ビットコインとゴールドの12ヶ月相関は−0.45となっています。この点については、後の節で詳しく述べます。

分散投資で本当に重要なのは、平時の相関だけではありません。危機時やリスクオフ局面で、他の資産と同時に下がらないかどうかが重要です。普段は相関がそれほど高くないように見えても、相場が崩れる局面で株式と同時に下落するのであれば、ポートフォリオの防御力という意味での分散効果は限定的になります。

この点は、足元の値動きにも表れています。市場全体が下落した2026年6月には、S&P500とNASDAQ100の下落が3%台にとどまったのに対し、ビットコインは月初から約16%下落しました。広範なリスクオフ局面では、ビットコインが株式以上に大きく売られる場面があることを示しています。

もっとも、ビットコインの相関は常に一定ではありません。地政学リスクや金融不安の局面では、法定通貨への不信や流動性需要を背景に、ビットコインが一時的に買われる場面もあります。一方で、同じ局面でも投資家がリスク資産全体を圧縮する展開になれば、ビットコインも株式と同時に売られます。相関は市場環境によって振れる指標であり、固定的に捉えるべきではありません。

つまり、ビットコインは「常に分散効果がある資産」と見るよりも、「平時には分散効果が見られることもあるが、リスクオフ局面では株式と同時に、しかもより大きく売られる可能性がある資産」と考える方が実態に近いといえます。


ビットコインは「デジタルゴールド」なのか、「高ベータ成長資産」なのか

ビットコインはしばしば「デジタルゴールド」と呼ばれます。発行上限があり、中央銀行の金融政策に依存しないため、法定通貨価値の毀損に対するヘッジになるという考え方です。

この見方には一定の合理性があります。財政赤字、インフレ、通貨価値の低下、資本規制などに対する保険として、ビットコインを評価する投資家は存在します。

しかし、実際の値動きを見ると、ビットコインは金とはむしろ逆の方向に、ハイテク株とは同じ方向に動いているのが現状です。当社が算出した2026年5月末時点の12ヶ月ローリング相関では、ビットコインとNASDAQ100が+0.57、S&P500が+0.49であるのに対し、ゴールドとは−0.45となっています。過去12ヶ月の月次データで見る限り、ビットコインは金よりもNASDAQ100やS&P500と連動しやすい傾向が確認されます。「デジタルゴールド」という呼称が想起させる値動きとは、実態は異なっているといえます。

ただし、この金との逆相関を、「ビットコインが完全に株式化した証拠」と単純に解釈するのは正確ではありません。2025年以降は金そのものが安全資産として独歩高となった局面が多く、ビットコインが下落する裏で金が上昇したことが、相関をマイナス方向に押し下げた面があります。たとえば2026年1月には、ビットコインが約11%下落する一方で金は約13%上昇しました。両者の逆相関は、ビットコイン側の要因だけでなく、金側の要因も反映していると見るべきです。

それでも、ビットコインが安全資産というよりも高ボラティリティのリスク資産として振る舞っているという点は、ボラティリティの大きさからも裏付けられます。直近3年間の年率ボラティリティは、ビットコインが約49%であるのに対し、S&P500は約13%です。ビットコインはおよそ3.7倍の値動きの大きさを持っており、安全資産と呼ぶには変動が大きすぎます。

この点を誤解すると、ポートフォリオ管理上のリスクが大きくなります。ビットコインを金の代替として保有しているつもりでも、実際には金とは逆方向に動き、株式市場のリスクオフ局面で株式以上に下落する可能性があります。先に述べたとおり、2026年6月の下落局面では、株式の下落が3%台にとどまるなかでビットコインは約16%下落しました。安全資産を保有しているつもりが、ポートフォリオの変動を増幅させていた、という結果になりかねません。

逆に、成長資産として小口配分するのであれば、高いボラティリティと、ハイテク株と連動しやすいという性質を前提に、あらかじめ配分比率やリバランスルールを決めておく必要があります。重要なのは、ビットコインを「金の代わり」と位置づけるのか、「ハイテク株に近い高ベータの成長資産」と位置づけるのかを、実際の値動きに即して明確にしておくことです。


ビットコインとヘッジファンド戦略は、同じ「オルタナティブ」でも役割が異なる

ビットコインは、株式や債券とは異なる値動きを期待される資産として注目されてきました。しかし、ポートフォリオ運用において重要なのは、資産名が伝統的か非伝統的かではありません。重要なのは、どのような市場環境で、どのような収益源泉が働くかです。

たとえば、株式ロング・ショート、グローバルマクロ、トレンドフォロー、相対価値、イベントドリブンなどのヘッジファンド戦略は、それぞれ異なる収益源泉とリスク特性を持っています。もちろん、これらの戦略も常に利益を生むわけではなく、運用者の能力、リスク管理、流動性、レバレッジ、手数料体系などを慎重に確認する必要があります。

それでも、分散投資の観点では、「価格が上がりそうな資産を追加すること」と「既存ポートフォリオと異なる収益源泉を追加すること」は明確に区別すべきです。

ビットコインを保有すること自体が悪いわけではありません。しかし、米国株やNASDAQ、半導体株と同じリスクオン局面で買われ、同じリスクオフ局面で売られるのであれば、見かけ上はオルタナティブ資産を増やしていても、実際にはポートフォリオ全体のリスク分散になっていない可能性があります。

富裕層の資産運用では、単に「株式以外の資産を持つ」ことではなく、ストレス時にどの資産・戦略がどのように機能するかを確認することが重要です。


富裕層が確認すべき実務上のポイント

ビットコインを保有するかどうかは、単独の価格見通しだけで判断すべきではありません。既存の株式、債券、投資信託、プライベート資産、ヘッジファンド戦略などを含めたポートフォリオ全体の中で、それがどの程度のリスクを背負い込むのかを確認する必要があります。

特にETF化後は、ビットコインの価格水準そのものよりも、「他の資産とどう連動しているか」「ストレス局面でどう動くか」を継続的に把握することが重要になります。具体的には、次のような指標を定点観測することが有効です。

確認すべき指標何を読み取るか直近の読み(当社データ)
株式との12ヶ月ローリング相関リスクオン・オフでの株式との連動度対NASDAQ100 +0.57/対S&P500 +0.49
金との相関「デジタルゴールド」という前提の妥当性対ゴールド −0.45(=逆相関)
株式・金に対する相対パフォーマンス資金がどこへ向かっているか2026年5月はBTC −3.7%に対しNASDAQ100 +10.5%
年率ボラティリティ配分時に許容すべき振れ幅約49%(S&P500の約3.7倍/直近3年)
リスクオフ局面での下落幅危機時にどれだけ売られるか2026年6月はBTC約−16%/株式は−3%台
米国現物ビットコインETFの資金流出入限界的な買い手・売り手としての方向Farside等の日次データで確認
米実質金利・ドル指数無利息資産にとっての逆風の有無外部マクロデータで確認
ポートフォリオ全体へのリスク寄与度実際に分散になっているか個別ポートフォリオごとの分析が必要

上段の5項目は、ビットコイン・金・S&P500・NASDAQ100の長期データから当社が継続的に算出している指標です。たとえば足元では、ビットコインは株式と正の相関を保ちながら金とは逆相関にあり、2026年5月にはNASDAQ100が二桁上昇する局面でビットコインが下落しました。これらは、ビットコインが「金の代替」ではなく、ハイテク株に近い高ベータのリスク資産として動いていることを示唆しています。

ただし、これらの指標は固定的なものではありません。相関もボラティリティも市場環境によって変動し、地政学リスクや金融不安の局面では一時的に異なる動きを見せることもあります。重要なのは、ある一時点の数値ではなく、推移と局面ごとの振る舞いを継続的に確認することです。

そして、指標以上に大切なのは、ビットコインを「何の目的で保有するのか」を明確にすることです。分散投資のために保有するのか。インフレや通貨価値毀損へのヘッジとして保有するのか。高成長資産として小口配分するのか。あるいは、長期的な金融システムの変化に対するオプションとして保有するのか。目的によって、適切な配分比率も、許容すべき下落幅も、売買ルールも変わってきます。

特に注意が必要なのは、すでに米国株、NASDAQ、半導体株、グロース株ファンド、未上場のAI関連企業などへの投資比率が高い投資家です。ビットコインを追加することで、見かけ上はオルタナティブ資産を増やしているように見えても、足元の相関を踏まえれば、実際には同じリスクオン方向のエクスポージャーを上乗せしているだけになっている可能性があります。先に見たように、リスクオフ局面ではビットコインが株式以上に大きく下落する場面もあり、その場合、分散どころかポートフォリオ全体の下落を増幅させかねません。

富裕層の資産運用において重要なのは、単に投資対象の数を増やすことではなく、資産全体のリスク構造を把握したうえで、異なる収益源泉をどう組み合わせるかです。ビットコインが既存の資産とどの程度リスクを重ねているのか、ストレス時にどう振る舞うのか——こうしたポートフォリオ全体に対するリスク寄与度や分散効果の評価には、個別の状況に即した専門的な分析が必要になります。


まとめ:ビットコイン下落の本質は、金融商品化による分散効果の変質

ビットコインが下落した直接的な理由は、現物ビットコインETFからの資金流出、AI・半導体株への資金選好の高まり、米金利の高止まり・ドル高、ビットコインを大量保有する上場企業を巡るセンチメントの悪化などです。

しかし、より本質的には、ビットコインがETF化によって伝統的金融市場の一部になったことが重要です。ETF化は、ビットコインを投資しやすい資産にしました。一方で、株式や金、債券、テーマ型ETFと同じ資金配分の中で売買される資産にもしました。

その結果、ビットコインは以前ほど「金融市場の外側にある非相関資産」とは言いにくくなっています。当社の算出でも、足元のビットコインは株式と正の相関、金とは逆相関にあり、リスクオフ局面では株式以上に大きく下落しています。分散投資効果は完全になくなったわけではありませんが、平時とストレス時で大きく変わる可能性があります。

ビットコインをポートフォリオに組み入れる際には、「分散投資になるから」という単純な理由だけでは不十分です。ETFフロー、株式市場との相関、米金利、ドル指数、リスクオフ局面での値動き、そしてポートフォリオ全体へのリスク寄与度を確認する必要があります。

ビットコインは、もはや単なる暗号資産ではありません。ETF化によって、伝統的金融市場に組み込まれた高ボラティリティのオルタナティブ資産として、改めて評価する必要があります。


※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産、ETF、金融商品、ヘッジファンド戦略の取得・売却を推奨するものではありません。本文中の価格・相関係数・騰落率・ボラティリティは、ビットコイン・ゴールド・S&P500・NASDAQ100の市場データ(Bloomberg等)およびETFフロー(Farside Investors)を基に当社が算出・作成したものです。相関に関する数値は2026年5月末時点(12ヶ月ローリング)、価格は2026年6月26日時点のものです。いずれも執筆時点の数値であり、市場環境により変動します。暗号資産は価格変動が大きく、投資元本を大きく毀損する可能性があります。投資判断にあたっては、ご自身の運用目的、リスク許容度、資産全体の状況を踏まえて慎重にご検討ください。

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この記事を書いた人

監修:柿本 紘輝(CFP証券アナリスト協会検定会員
業界最大手の投資助言会社ヘッジファンドダイレクト株式会社が運営。
富裕層向けに投資助言契約累計1,477億円、投資助言継続率91%。(いずれも2025年末時点)
当社の認定ファイナンシャルプランナー(CFP、国際資格)、証券アナリスト(CMA)が監修して、初心者にも分かりやすく、良質な情報をお届けしています。

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