シンガポールのヘッジファンド、ダイモン・アジア・キャピタル(シンガポール)は、今後ブラックスワンといえるようなリスクが発生すると考え、市場の混乱から利益を得られるようなポジションを組んでいると、Bloombergの取材に答えた。
ヘッジファンドのダイモン社の運用資産額は約50億ドルで、そのうち約15億ドルがダイモン・アジア・マクロ・ファンドである。
現在はヘッジファンドのポートフォリオのおよそ3分の1が、ブラックスワンリスク対策のポートフォリオになっているという。
ダイモン・アジア・キャピタルのヘッジファンドマネージャーのヨン氏は現在のインデックス投資とアルゴリズム取引の人気の高まりが「市場の油断」を引き起こしており、安定的なゴルディロックス相場を形成し得ているが、これが新たな歪みを作り、次の危機はまた大きなものになる可能性があると述べている。
「昔は、おおよそ年に2回ほどの頻度で市場の混乱があった。しかし今後は、市場の大きな動きは2年に1度、そして3年に1度と、徐々に間隔が長くなる可能性がある。 そうなった場合、混乱は以前よりもずっと大きくなるだろう」と述べた。
ダイモン・アジア・キャピタルは、米中貿易交渉の決裂や米連邦準備制度理事会による一段の利下げを余儀なくされるなど、ヨン氏は市場が過小評価しているとみている金利や通貨オプションに投資している。彼はまた、金を所有するか、ヘッジとして金のコールオプションを持つことを勧めている。
オプションのレバレッジを組み込んで運用しており、ダイモン・アジア・マクロ・ファンドは、仮に市場の混乱が起こらなくとも資産の3%以上を失うことはないように運用されている。
ヘッジファンドマネージャーのヨン氏によると、同社のマクロファンドは、様々な時点で、テールリスクやディスロケーション型の投資をさらに多く保有する可能性がある。このような賭けは必ずしも市場の弱気な見方を示すものではなく、むしろその証券が市場イベントの可能性に対して適切な価格付けをしているかどうかを示すものであるという。
このようにヘッジファンドが可能性の低いイベントから大きなリターンを目指す運用をスペシャルシチュエーションファンドといい、直近ではイギリスのEU離脱や、スイスフランショックなどで大きなリターンを上げているファンドがいる。
ブラックスワンとは元ヘッジファンド運用者である、ナシーム・ニコラス・タレブが著書で名付けた現象である。統計学や従来の知識や経験からは事前に把握・予測することのできないような極端な事象が発生し、それが人々の行動に大きな影響を与えることをいう。